第二部 18 事を成す 19 先見の明

 

日本ソフトバンクは福岡から東京に拠点を移したものの、事務所は机二つ借りただけのものでした。

ある日、上新電機の藤原睦朗という男が孫さんがソフトの品揃えの仕事をしたがっているが、仕事をさせてくれる相手がいなくて困ってるという話を聞きつけて電話をかけてきます。

孫さんはぜひやりたいと答えましたが、展示会や家賃、必要経費でお金が底をついていたため、大阪にある上新電機まで行く旅費さえ惜しい状況でした。

その状況のなか、上新電機の社長である浄弘博光さんがたまたま東京行く機会があり、そのついでに孫さんに会いたいと言ってきます。

孫さんはコンピュータ時代のことを熱く語り、誰にも負けない情熱、成功への確信を感じた浄弘社長は条件付きで独占契約を結びます。

その条件とは全国からあらゆるソフトを集めるということでした。

孫さんは北海道から九州まで駆け巡り、4500万円に上るソフトを集めます。

 

当時資金がほぼなく、事務所も小さい孫さんにあるのは夢と情熱だけでしたが、ソフトバンクを日本一にするために必死で目の前のことに立ち向かって行く姿に感銘を受けました。

また、その大きな夢を妄想ではなく、可能にしようとしていることが説得力と行動力から伝わってきます。

 

運転資金が底をついた孫さんは大手銀行に融資の話を持ちかけますが、実積も何もない若い経営者の夢と情熱に耳を傾けてはくれません。

ただ、現・みずほ銀行の御器谷さんだけは、孫さんの情熱に心を動かされ、そのことに気づいた孫さんは1億円の融資を希望します。

そして信用調査を経て、担保なし、保証人なしの1億円融資が決まります。

これはシャープの佐々木さんや上新電機の浄弘社長のように、何よりも仕事にかける熱い想いに多くの人が心を動かされたことが影響していると思いました。