第二部 17 巨人と天才

日本に戻って1年半が過ぎ、孫さんは自分が生涯をかけてするビジネスはコンピュータ業界だと確信します。

1981年の9月、日本ソフトバンクを設立し、パソコン用のソフトウェアの流通ビジネスをします。

毎年開かれる家電・エレクトロニクス業界の展示会、エレクトロニクスショーに資本金1000千万円のうち800万円を投じます。

桁違いの規模である松下やソニーと変わらない大きさのブースを借りたところ、サラリーマン、エレクトロニクス関係者などが多く訪れ、大盛況となりました。

そして孫さんはこのエレクトロニクスショーで、ショーに出品し人気があったシャープのポケットコンピュータのソフト集「ポケコンライブラリー」を全国の書店で販売するというアイデアを思いつきます。

シャープの佐々木さんの知人を介して東京旭屋書店の統括本部を訪れ、常務の田辺さんに出版したいことを話すと、売り物にならないと断られます。

しかし、ここで引き下がるはずがない孫さんはコンピュータがいかに今後普及していくかを話して説得し、ついに「ポケコンライブラリー」の出版が決定します。

これがまた見事に売れ、出版業界にも日本ソフトバンクの名を知らしめました。

 

孫さんはこれからコンピュータが伸びると確信するという、時代の先を見る洞察力がかなりあることが伺えました。

また、資本金の8割ものお金をかけてエレクトロニクスショーにブースを出展し、松下やソニーと肩を並べて大成功してしまうことには驚きました。 

そして次々とアイデアが浮かぶのは、孫さんの学生時代に発明したり、思いついたことをすぐメモに取ったりする癖から来るものだと思いました。